当記事はErnest Hemingway著『The Old Man and the Sea(老人と海)』の書評です。「生きている間に読みたい英語の小説100冊」について詳しくはこちら↓
ヘミングウェイは1954年、この作品によりノーベル賞を受賞しています。
『The Old Man and the Sea(老人と海)』レベル感
Lexile指数(本の難易度と英語の読解力を数値化するためにアメリカで開発された指標)は940L、英検で言うと2級未満となります。単語は船や海に関係するものが多く、普段英文を読みなれていないと難しく感じるかもしれません。しかし、会話や状況描写などは比較的平易な文章になっています。また、同じ単語が繰り返し出てきますので、読み終わるころには自然といくつか単語を習得していることでしょう。
多読するうえで私はLexile指数は割と参考にしていますが、帯や裏表紙に記載されたTOEICのレベルはあまりあてにしていません。数冊洋書を読んでみて、それらのLexle指数を自分の中で基準にし、「あの本がLexile1000Lだったから、この本は800Lだしもっと易しいかな」という判断をするといいと思います。
『The Old Man and the Sea(老人と海)』あらすじ
この物語は至極単純なストーリーで、老いた漁師が84日間の不漁の後、自身の小舟よりもはるかに大きいカジキとたった一人で3日間戦い、遂に捕獲するが、帰路で何度も鮫に襲われ、そのたび経験と技術を駆使して必死に応戦するというもの。
この作品の魅力は、あらすじよりも自然の猛威、美しさ、老人の精神力、垣間見せる弱さが波のように押し寄せてくる文章と、読んでいるこちらが船酔いしそうなほどの細やか、かつ徹底的な外面描写だと思います。
『The Old Man and the Sea(老人と海)』感想・レビュー
初めて読んだのは翻訳本で、10年以上前だったと思います。内容は覚えておらず、短い話だと思った記憶しかなかったのですが、今回洋書で読んでみて、年齢を重ねたせいか、とても染み入りました。単純なストーリーながら、なんと濃い内容なのかと、一切の無駄をそぎ落とした上での短さなのだと納得しました。
本書を読むべきポイント3つに分けてお伝えします。
ポイント1.自然との対話
船を通り過ぎるイルカ、鳥、星や月、波や風にも老人はいろいろなことを思います。大海の中に一人でありながら一人ではありません。老人はカジキに“Brother,”と呼びかけたり、小鳥や鮫に“You,”と話しかけたり、生き物にある種の敬意を持って接しているのが分かります。老人には過去、カジキに関して「もっとも悲しかった」出来事があります。
(オス、メスでペアのカジキのうち、メスのみ捕獲して)hoisted her aboard,the male fish had stayed by the side of the boat.Then,while the old man was clearing the lines and preparing the harpoon,the male fish jumped high into the air beside the boat to see where the female was and then went down deep,his lavender wings,that were his pectoral fins,spread wide and all his wide lavender stripes showing.
メスを持ち上げ載せた際、オスはボートのそばにとどまった。老人が網を掃除し銛を準備しているとオスは高くジャンプし、メスがどこにいるかを確認し、そのあと美しいラベンダーの胸ビレと縞模様を見せながら深く潜った。
The Old Man and the SeaーErnest Hemingway
注)訳は意訳です。
この経験もあってカジキを含め、自然そのものに敬意を持って接しているように感じられました。
ポイント2.無駄を省いた文章
Once there had been a tinted photograph of his wife on the wall but he had taken it down because it made him too lonely to see it and it was on the shelf in the corner under his clean shirt.
かつて妻の色つきの写真が壁にあったが、寂しくて見ることができず、部屋の隅にある清潔なシャツの下にある棚におろした。
The Old Man and the SeaーErnest Hemingway
この話にはほとんど心理描写がなく、老人の詳しい情報は読者には与えられていません。この文章だけで、妻に先立たれたこと、老人には良い伴侶であったことを読者に連想させます。今は一緒に船に乗っていない少年についても同様、会話とやり取りで少年は老人を慕い、老人も少年を我が子のように思っているのが伝わってきます。
ポイント3.少年と住民の温かさ
The boy saw that the old man was breathing and then he saw the old man’s hands he started to cry.He went out very quietly to go to bring some coffee and all the way down the road he was crying.
少年は老人が息をしているのを見て、そして老人の手を見て泣き始めた。コーヒーを持ってこようと静かに外へでて、道すがらずっと泣いていた。
The Old Man and the SeaーErnest Hemingway
上の引用は、漁から戻った老人を見た少年の反応です。
老人は海へ出ている間、何度も「あの子がいたらなあ!」と口にします。海から戻って少年に再会して、独り言や海に話しかけるより、話し相手がいるのはなんと嬉しいことかと実感します。
付近の住民も、冒頭では不漁続きの老人に対し、態度には出さずとも同情して胸を痛めています。老人がいなくなった際には警備隊と航空機を使っての捜索をしていたよう。老人の精神力の根幹は、描写はされていないものの、老人の生きてきた人生と深く関係しており、それは少年だったり、老人が生きてきた街の人々であったりするのかもと思わされました。
『The Old Man and the Sea(老人と海)』感想・まとめ
キューバの漁師という、自分が関わることのないであろう一人の職人の生き様を、ヘミングウェイの圧倒的な文章力で実体験できる本書。こちらはぜひ原書で読んでみてほしいです。
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