不思議の国のアリス- Alice’s adventures in wonderland –
英語多読第一回目は、「不思議の国のアリス」でおなじみ、Alice’s adventures in wonderlandーLewis Carrollです。ディズニー映画の影響で、なんとなく知ってはいるが、原作は読んだことはないという人は多いのではないでしょうか。
今回この本を取り上げた理由は、「楽しく習得!英語多読法 クリストファー・ベルトン ちくまプリマー新書」にて、生きている間に読みたい英語の小説100冊として紹介されていたためです。
この100冊のリストは 1)どれも有名な本なのでレビューや情報を容易に得られ、2)文章が簡潔なものが多く、
3)あらゆるジャンルを網羅していて、4)著作権が切れている本が多いため電子書籍で無料かかなり安く読める、かつ英米の多くの人の意見を反映したという著者渾身のリストです。このブログで洋書を紹介していくにあたり、自分好みの本以外にも、100冊リストの本にも挑戦していきたいと思います。
Alice’s adventures in wonderland のレベル感
Alice’s adventures in wonderland のレベル感は英検2級以上~準1級以下と推定します。
平易な文章なので、英検2級レベルで読めると思います。ただし場面展開が早く、くるくるシーンが変わるので、英文を読み慣れていない人は疲れるかもしれません。英文を読み慣れた英検2級レベルの人で時々辞書を引く程度、または英検準1級レベルならだいぶ楽だと思います。
Alice’s adventures in wonderland のあらすじ
but when the Rabbit actually took a watch out of its waistcoat-pocket,and looked at it,and then hurried on,Alice started to her feet,for it flashed across her mind that she had never before seen a rabbit with either a waistcoat-pocket,or a watch to take out of it,and burning with curiosity,she ran across the field after it,
しかしウサギが実際にウエストコートのポケットから時計を取り出し、それをみて、急いで駆けていくのを見ると、アリスは立ち上がったのです。ポケット付きのウエストコートを着たウサギも、そのポケットから時計を取り出すウサギも、今まで見たことがなかったと思い出したからです。そして好奇心を押さえられず、ウサギを追いかけて野原を駆けていきました。
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
冒頭で、チョッキのポケットから時計を取り出しているおかしなウサギを見つけたアリス。抑えきれない好奇心からウサギを追いかけます。
突然始まる物語。読者は、まさに自分がその場にいるかのように物語に引き込まれていきます。
随所に散りばめられた洒落
この物語の魅力は、洒落と言葉遊び、キャラクター同士のナンセンスでおかしな会話です。
ネズミの悲しい身の上話
‘Mine is a long and a sad tale!’ said the Mouse, turning to Alice, and sighing.
‘It is a long tail, certainly,’ said Alice, looking down with wonder at the Mouse’s tail; ‘but why do you call it sad?’
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
ネズミの悲しい話(テイル)をネズミの悲しい尾(テイル)と勘違いしたアリス。なぜ悲しいのか気になるアリスには、続くネズミの話がネズミの尾の形で聞こえてきます。自分の話を聞いていないと怒るネズミに、アリスは5つ目の角まで来たんでしたっけ?ととんちんかんな返事をします。ここは書籍で読まないとわかりにくいところです。
リクガメと呼ばれるウミガメの先生
‘We went to school in the sea.The master was an old Turtle-we used to call him Tortoise-’
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
‘Why did you call him Tortoise, if he wasn’t one?’ Alice asked.
‘We call him Tortoise because he taught us’ said the Mock Turtle angrily. ‘Really you are very dull !’
リクガメ(トートアス)と自分たちを教えた(トートアス)をかけています。偽ウミガメはアリスに、そんな当たり前のことを聞くなんてばかだな!とぴしゃり。
本でも映画でも、洒落は翻訳者の腕の見せ所でありますが、じわりとくる面白みはやはり原作ならでは。
時代背景がわかればもっと面白いアリスの世界
この本を楽しめたとしても、クリアに理解できない場面もあるかもしれません。少し疑問に思ったシーンについて個人的に調べたので、参考になればと思いご紹介します。
1.ティーポットに眠りネズミを入れようとする帽子屋とウサギ
She got up in great disgust, and walked off; the Dormouse fell asleep instantly, and neither of the others took the least of her going, though she looked back once or twice, half hoping that they would call after her; the last time she saw them, they were trying to put the Dormouse into the teapot.
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
マッドなお茶会のシーンにて。帽子屋の態度に怒ったアリスは席を立ち、その場から離れます。引き留めてほしかったものの、彼らはアリスにはお構いなし。眠ってしまったネズミをティーポットに入れようとしています。これは、ビクトリア朝時代の子供たちはヤマネをペットにすることがあり、コケや草を詰めたティーポットなどにヤマネを入れて冬眠させていたことからきているそうです。
2.偽ウミガメスープ
‘Have you seen the Mock turtle yet?’
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
‘No,’said Alice.‘I don’t even know what a Mock Turtle is.’
‘It’s the thing Mock Turtle Soup is made from’
女王はアリスに、偽ウミガメには会ったかと聞きますが、アリスには何のことやら。女王は、偽ウミガメは偽ウミガメスープの材料だと言います。このスープはウミガメに似せただけの仔牛のスープですが、一八世紀頃に流行したそうです。 作者は言葉遊びを発展させ、キャラクターまで生み出しているのです。
3.タラの口にしっぽ
(鱈がどんなものか知っているか尋ねられて)‘I believe so,’ Alice replied thoughtfully. ‘They have their tails in their mouths-and they are all over crumbs.’
Alice’s adventures in wonderland Lewis Carroll
この描写で、口に尾がある鱈?と思い、よくわからなかったのですが、調べてみれば、小鱈の尾を目や口に通し、パン粉をまぶして揚げる調理法だとか。画像検索してやっと納得しました。
終わりに
ふしぎの国のアリスについて、本を読むまでは事前知識はアニメと実写版のディズニー映画のみでした。映画も面白いですが、本は想像以上に奥深く、ウィットに富み、映画との違いを見つけられてとても楽しく読めました。たとえば、本ではアリスは体が大きくなるというよりも、首が伸びているのです。鳩から、卵を奪いに来た蛇と叫ばれるのも長首であればこそ。そして魅力的なのは、ジョン・テニエルの挿絵です。リアルで少し怖いけれども、とっても可愛い挿絵がこの物語をさらに魅力的にしています。一生に一度は読みたいといわれる物語、ぜひ手に取ってみてください。