「The Witches」(魔女がいっぱい)|大人も楽しめるダークファンタジー 

英語

 英語多読二回目は大好きなロアルド・ダール作品。「The Witches–Roald Dahl」(邦題は「魔女がいっぱい」)この著者の作品は図書館や学校の図書室に大抵置いてあるので、読んだことがある人は多いかもしれません。


The Witches

私の周囲では、「Charlie and the chocolate factory」や「Matilda」のほうが認知度はあるかなと感じます。小学生の頃図書室で借りて読み、あまりに怖くて面白くて衝撃的で、印象が強く忘れられなかったのです。大人になってから、今度は洋書を買って読みましたが、相変わらず面白く、ページを繰る手は止められず…。
この本は私が初めて読んだ洋書でもあり、記念すべき一冊です。今回ブログを書くにあたって再読しました。2020年、アン・ハサウェイ主演で映画にもなりました。もちろん私も劇場で観ましたが、尺の関係でかなりアレンジされており、ロアルド・ダールの「魔女」ではなく、ロバート・ゼメキス監督の「魔女」という印象でした。映画だけでなく、原作ももっと広く知られてほしいものです。 

「The Witches」レベル感 

Amazon記載のLexile指数(アメリカのMetMetrics社が開発した、英語の読解力と文章の難易度を表す指標)は740L、英検で言うと準2級レベルです。私が読んだ印象でも準2級以上、2級未満かなと感じました。準2級で英文を読み慣れていない場合、始めは少し時間がかかるかもしれませんが、慣れてきたらすぐに読了可能です。 

「The Witches」での魔女観 

おとぎ話とは異なり、実際の魔女は優しいどころかヒトの女性に似ただけの、まったく別の生き物であるという前提で物語は始まります。彼女らは子供を忌み嫌い、非道の限りを尽くして消したいと考えているのです。 
餌食は慎重に選びます。狙われたが最後、幼い子供は消えてしまいます。 

REAL WITCHES dress in ordinary clothes and look very much like ordinary women.They live in ordinary houses and they work in ORDINARY JOBS. 
That is why they are so hard to catch. 

The witches-Roald Dahl

そしてたちの悪いことに、魔女は一般人の中でごく自然に生活を営み、仕事を持ち、見つけるのはとても難しいのです。本の最初のほうに、女性二人の挿絵があります。どちらか一人が魔女で、もう一人は普通の女性なのですが、我々読者はこの段階では判別できません。見分け方は、のちに語られます。冒頭からシリアスに語られるので引き込まれます。 

「The Witches」魔女は登場人物に何をしたのか? 

主な登場人物は語り手である少年と、ヘビースモーカーである86歳の太ったおばあちゃん。二人は大の仲良し。物語序盤、少年の両親は交通事故で亡くなってしまいます。深い悲しみの中、おばあちゃんはいつものように少年に物語を聞かせます。おばあちゃんはとても話し上手で、どんな話も面白いのですが、魔女の話は格別。おばあちゃんは、昔、突然いなくなった自分の友達の話をします。 

ケース1 Ranghild Hansenの場合 

8歳の少女 Ranghildは、幼い妹と芝生で遊んでいた。パンを焼いていた母親が外に出たとき、 Ranghildの姿が見えないことに気づく。妹は、「姉は白い手袋をした、背の高い女性と行ってしまった」と言う。必死の捜索がなされたが、その後彼女を見たものはいなかった。 

ケース2 Solveg Christiansenの場合 

Christiansen家の居間には、農家とアヒル数匹が描かれた、大きな油絵があった。ある日、娘の Solvegが知らない女性から貰ったリンゴを食べながら学校から帰ってきた。翌朝 Solvegは忽然と姿を消した。父親は油絵の中に、今までいなかった少女を見つける。油絵の一部になってしまったSolvegは絵の中でアヒルに餌をやっていた。おばあちゃんは何度もその絵を見たが、 Solvegはある日は農家の窓から顔を出し、ある日はアヒルを腕に抱き、とポジションを変えていた。絵の中のSolvegは年を追うごとに成長していたが、54年後、絵から消えてしまった。 

ケース3 Haraldの場合 

ある朝 Harald少年の肌は固く、ナッツの殻のようにひび割れし始めた。夜までに、体はグラナイトになり固まってしまった。彼は今もその家の玄関に置かれ、訪問客は彼に傘を立てかけている。彼を見たければ連れて行ってあげるよ、とおばあちゃんは言う。

おばあちゃんも魔女に会ったことがあるようです。作中で詳細は語られません。しかし、おばあちゃんは当時の恐怖を沈黙で語ります。そして主人公の少年も、魔女には二度会っています。一度目は逃げられたものの、二度目はうまくはいかなかったようです。 

From the first I escaped unharmed,but on the second occasion I was not so lucky.(…)That can’ be helped.The truth must be told. 

The witches-Roald Dahl

魔女の頂点「Gland High Witch」 

各国に魔女たちのコミュニティはありますが、全世界の魔女の頂点に立つ存在が「Gland High Witch」です。魔女たちは年に一度、彼女の特別な講義を受ける機会が与えられます。 
主人公の少年とおばあちゃんは、何の因果か、その集会の会場であるホテルに彼女たちと同じ期間、滞在することになります。 
魔女たちが企てる恐ろしい計画、少年とおばあちゃんに何が起こるのか、何をするのか。読み始めたら止まりません。 

「The Witches」を読んだ感想 

初めて読んだとき、児童文学のセオリー(というのがあるか分かりませんが)を無視したラストに、ショックで呆然としました。こんな終わり方があるのかと驚きました。
大人になってから洋書を買い、少し余裕をもって読み、物語を通して少年とおばあちゃんとの会話にほっこりし、そして終盤の二人の会話が純粋に心に響き、温かい気持ちになりました。
ロアルド・ダールは凄い!おすすめです。 

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